イギリスで看護師として働く

2025/26年版|イギリス看護師の給料について

賃上げのニュース

今年の5月、政府から国民保健サービス(NHS)で働くスタッフの3.6%の賃上げが発表された。

参考:NHS pay award 2025 to 2026: a fair deal for NHS staff

イギリスで働く医療者の給料は過去3年の間に大幅に改善した。これはストライキ、政権交代によって勝ち取ったものであり、声を上げること、そして選挙の大切さを身をもって経験している。

まず初めに、どれだけ改善したかというと、初任給(バンド5)が£4000(約80万円)がアップした。このおかげで経済的なストレスが減ったのを実感している。

イギリス看護師の給料の基本

イギリスはイングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドの4つの国で構成され、それぞれの国で給料が設定されている。今回は多くの日本人看護師が暮らすイングランドとロンドンの給料について解説する。

バンドと呼ばれる階級によって給料が定められていて、大都市手当があるロンドン以外は一律同じ給料をもらう。新卒看護師と外国人看護師はバンド5からスタートする。

イングランド看護師の基本給

バンド 2年未満 2年以上4年未満 5年目以降
5 £31,049 £33,487 £37,796
6 £38,682 £40,823 £46,580
7 £47,810 £50,273 £54,710

以上の基本給に加えて、週末・祝日勤務手当、夜勤手当が加算される。そしてロンドンの場合は、大都市手当をもらうことができる。

参考:NHS pay 2025-26: the rates for nursing staff across the UK

ロンドン中心部の基本給

バンド 2年未満 2年以上4年未満 5年目以降
5 £37,259 £40,184 £45,375
6 £46,228 £48,569 £54,326
7 £55,556 £58,019 £62,456

今回の賃上げのポイント

開始給与で£30,000を超える

今まで初任給では£30,000を超えることができなかったので、その壁を越えられたことは大きい。

夜勤、週末勤務をすれば初任給で平均給与を超える

賃上げ前は、夜勤と週末勤務をしない限り、勤続年数が4年以上にならないと平均年収を超えることができなかった(イングランドの給料)

正当な賃金として平均給与を超えることは非常に重要なポイントだったので、それを超えられたことは嬉しく思う。

スコットランドは8%の賃上げ

ここ数年でスコットランドの給与は、その他の国と比べて劇的に改善している。スコットランド政府がNHSスタッフのことを賃金で正当に評価していて、本当に素晴らしいと思う。イングランド北部に住むなら、いっそのことスコットランドに住んだほうが良いくらいに両者のNHS賃金格差は広がっている。

残念だったこと

独立した看護師の給与体系は実現しなかった

残念だったのは、独立した看護師の給与体系が実現しなかったことだ。

イギリスの医療職の給与は、バンド制になっている。医師と歯科医師を除き、みな一律の給与をもらう。看護師を含む多くの医療職がバンド5からのスタートになっていて、組合は看護師の労働量と責任の重さが給与に反映されていないと訴えている。

各バンドの明確な業務や役割を明記する案の見送り

各バンドごとに大まかに役職が決まっていて、業務や役割はジョブディスクリプション(職務記述書)に明記されている。しかし、全国で統一した基準はなく、各病院によって違いがある。実際はジョブディスクリプション以上の業務を任せられることが多々あるため、搾取が起こりやすい。組合は、各バンドの業務や役割を明確に定めることを提案していたが、残念ながら政府から却下された。

このバンド制は明確なようで曖昧であり、シンプル過ぎるため、現在の看護職の労働量と責任を反映していない。バンド制が導入されて20年以上経つが、各職がそのバンドで適切かどうかを見直されたことは一度もない。

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参考:ジョブディスクリプション(職務記述書)とは?Nursing staff ‘bitterly let down’ as ministers confirm no separate pay spine for nursing

生活の変化

賃上げのおかげで手取りが増えるため、生活にとっては大きなプラスである。ひとりで暮らす分には問題はないが、家を買う、子どもを育てるとなると話は違ってくる。物価が高いイギリスでは、2人分の収入で経済的に余裕のある暮らしができると感じる。現地の人たちは、ここに大学の奨学金返済が加わるので、現在の物価高は多くの人にとって厳しいと思う。世界的に物価高になっているので、生活不安が増していく空気が重苦しい。

今ある環境のなかで精一杯やるのみ。

ABOUT ME
Mari
Mari
日英看護師。2012年看護師免許取得。総合病院勤務を経てカナダへ医療英語留学を経験。2021年に渡英しイギリス看護師免許を取得。ロンドンの大学病院(NHS)の循環器病棟にてシニアスタッフナースとして勤務。

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