イギリスで看護師として働く

2025年版|イギリス看護師の就職状況ー最新情報と対策

イギリス看護師の就職状況

2024年からイギリス看護師の就職難について取り上げてきた。2025年もあと少しで上半期が終わろうとしているが、状況は悪化していて特に新卒と外国人看護師の就職が厳しくなっている。今回はなぜ就職難の背景、見通し、そして対策をシェアしていく。

2025年版|イギリス看護師の就職難について https://mari7iro.com/uk-nurses-shortages-job/ 私は2015年頃から海外で看護師に...

就職難の背景

イギリス全土で看護師を含めた医療職は慢性的に不足している。どの病院も人手不足だが、かなりの就職難である。就職難の背景には、国営医療サービス(NHS)の資金不足が原因にある。資金不足は真新しい問題ではなく、イギリスに住んでいる人なら誰もが知っていることだが、現在は過去にないレベルで深刻さが増している。

2025/26年度のNHSイングランドの初期予算案の時点で約66億ポンドの赤字が見込まれていた。日本円にすると1兆円越えである。円安の影響を考慮しても、どうしようもないくらい大きな額になっている。ちなみに日本の健康保険組合は約3,000億円の赤字だそう。

参考:Update on 2025/26 planning round「令和7年度健保組合予算早期集計結果の概要」を公表 約8割の健保組合が赤字へ(健保連)

各トラスト(複数の病院がまとまったグループ)は、あの手この手を使って赤字を解消しようとしている。しかし、多くのトラストが上手くいっていないのが実際に働いてよく分かる。赤字解消の矛先は人件費に向かい、どの医療職においても職数が激減している。

これまで見てきた人件費削減対策は、

  • 内部採用の推進
  • エージェンシー(派遣)の利用停止
  • 求人数の削減
  • ビザスポンサーの停止
  • 産休代替職員の募集停止
  • バンドを下げて求人

などで本当にあの手この手を使い、身を削りながら赤字削減を試みている。

人件費を削減することで、目先の赤字は解消できるかもしれないが、医療サービス提供の遅れや既存スタッフの負担増加などは考えられていない。人件費削減の負の影響は簡単に想像できるが、そういったリスクすら考えていられないくらい逼迫しているのかもしれない。

詳しい人件費削減対策は、こちらの記事で取り上げている。

イギリスの医療崩壊|イギリス医療と看護師を取り巻く問題 イギリスと国民保健サービス イギリスの医療保険は国民保健サービス(NHS)と呼ばれ、医療費は一部の処方薬を除きすべて無料である。基...

ニュースでは、イングランド全体で最大10万人以上の人員削減予定であると報道されている。採用抑制だけでなく、既存のスタッフのリストラも含まれる可能性も示唆されている。NHSは公的医療制度のため、民間企業のようにリストラが行われるのは稀である。するとしたら定年が近い管理職や後方支援部門であり、現状では医療スタッフのリストラはかなり低いと思う。

採用抑制は進んでいて、各トラストが何百もの求人数を削減している。私のトラストでは全体で900の求人数が削減された。

参考:Hospitals in England could shed 100,000 jobs in response to cost-cutting ordersNHS trust to cut 430 jobs in bid to save £97mNHS staff face unprecedented job losses, says boss

今後の見通し

今年いっぱいは、この就職難の状況が続くと思われる。NHSの年間予算が赤字スタートのため、この状況が年内に改善していくことが考えにくい。正直なところ、2026年以降も就職難はしばらく続きそうだと感じる。

外国人看護師を雇うのは病院にとってコストが高い。病院は、スポンサーシップ発行手数料(£293)に加えて、一人あたり年間£1000を移民局に支払う必要がある。外国人看護師を3年間雇うと、NHSは£3000以上の費用が支払うため、現在の資金不足の状況では厳しい出費である。

※看護師のビザは3年間が一般的で、3年後に更新する必要がある。

私がイギリスで看護師になったときは、さまざな経済的支援があった。こうなった今では幻のように感じる。新型コロナで人手不足がかなり深刻だったので、本当にラッキーだった。

就職難の対策

前回の記事でも対策を考えたので、現状況をふまえて対策を挙げてみる。現在、そしてこれからイギリス看護師を目指す人の参考になれば幸いに思う。

改善するまで待つ

時間との戦いになるが、状況が改善するまで、タイミングがやってくるときまで待つ。その間に自分でできること(NMC登録)、看護師としての職歴を積み上げておく。

他の国を選ぶ

イギリスにこだわりがなければ、他の国を選んでも良いと思う。海外で看護師になるには、社会情勢に影響されやすいので、状況に合わせて柔軟に対応できると選択肢が広がる。

YMSビザを利用する

30歳未満であれば、YMSビザを利用することができる。そうすればビザスポンサーは不要になるのでかなり有効な選択肢だ。ただ、イギリス看護師免許の取得が必須であること、年齢に制限があるので当てはまる人は限られる。

また、YMSビザは永住権(ILR)に繋がる滞在期間にカウントされないため、永住権を目指している人にとっては、やや長距離ルートになる。医療者向けのビザ(Health and Care Worker visa)よりも費用がかかるのが痛いが、デメリットを考慮してもビザスポンサーが不要なのは大きい。

配偶者ビザを検討する

イギリス人パートナーまたはILRを持ったパートナーがいる場合に考えられる。相手がいることなので簡単には決められないが、ビザ問題を抱えている人はパートナーと話し合ってみても良いと思う。

ビザ申請費用は高く、イギリス滞在が配偶者ありきになることは念頭においておく必要がある。そして、ILR申請では医療者ビザと配偶者ビザの滞在期間を合算できない。医療者ビザから配偶者ビザに切り替えた場合は、永住権までの滞在期間(5年間)を再スタートすることになる。より長いルートになるので、自分にとってベストな選択は何かを考えたいところだ。

また、移民女性は家庭内暴力の被害者になりやすい。海外で生きるためには、どのようなビザステータスであっても経済的に自立しておくことが大切だと思う。

イギリスの家庭内暴力ヘルプセンター:Reguge

行動し続ける

最後は行動し続けた人にチャンスは回ってくる。外国人看護師の採用は厳しくなっているが、友人のトラストでは外国人看護師を受け入れをしていると聞いた。こういったチャンスを掴むためには、情報収集を続けること、有言実行を続けることが必要だと思う。

イギリス看護師を目指す人にとっては、厳しい状況で見通しが見えないのがもどかしく感じる。また変化があれば、ブログでシェアしていきます。

ABOUT ME
Mari
Mari
日英看護師。2012年看護師免許取得。総合病院勤務を経てカナダへ医療英語留学を経験。2021年に渡英しイギリス看護師免許を取得。ロンドンの大学病院(NHS)の循環器病棟にてシニアスタッフナースとして勤務。

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