イギリスの医療と看護

クリニカルナーススペシャリスト(CNS)の仕事を見学をしてきた

イギリス看護師としてキャリアアップするために自主リサーチとキャリア相談を経て、現在の目標であるクリニカルナーススペシャリスト(CNS)のシャドーイングをする機会を得ることができた。

1年目|イギリス看護師のキャリアアップの道のり イギリスで看護師を目指した理由のひとつにキャリアップを挙げていた。日本で看護師として働いていたときは、労働環境の過酷さに負けてやりた...
看護師のキャリア相談、キャリアクリニックに行ってきたイギリス看護師としてキャリアアップを図るために受けたキャリア相談を受けてきた。今回は具体的にどのような相談だったかをシェアしていく。 ...

クリニカルナーススペシャリストとは

イギリスにはクリニカルナーススペシャリスト(CNS)と呼ばれる役職がある。専門分野の高度な知識を持ち、高度な医療と看護を提供する役割を持つ。各分野や病院にもよって業務は異なるが、スペシャリストとして病棟患者・外来患者幅広くの両方を幅広く患者に看護を提供をしている。

日本とイギリスの違い

日本にも高度な知識と技術を持つ看護師資格として専門看護師と認定看護師が活躍している。それぞれの英語名は専門看護師はCertified Nurse Specialist、認定看護師はCertified Nurseである。”Certified”には認証された、という意味がある。

日本の専門看護師は院教育、認定看護師は規定の研修を修了することが条件で制度化・資格化されているが、イギリスのCNSは資格化されていない。基本的には3年以上の臨床経験が必要で大学院修士課程を修了することが求められているが、CNSになってから取得する人も多い。

また、イギリスのCNSは疾患ごとに細かく分けられている。私は循環器病棟に務めているが、普段から多くの専門看護師と関わる。専門分野に特化し、細分化されいているのがイギリスCNSの特徴である。退院調整のような非臨床型のCNSもいる。

私の病院で活躍するCNSの分野

  • 狭心症
  • 心不全
  • 肺高血圧症
  • 成人先天性肺疾患
  • 不整脈
  • TAVI(経カテーテル的大動脈生体弁植え込み術)
  • 弁膜症
  • 褥瘡
  • 緩和ケア
  • 疼痛
  • 退院調整
  • ECMO など

仕事見学(シャドーイング)について

キャリア相談でCNSのシャドーイング(仕事見学)をおすすめされた。シャドーイングとは、担当者に同行し仕事内容を見学することだ。日本で看護師をしていたときも導入されていて看護業界では一般的なようである。

当日は担当CNSのオフィスに出向いた。挨拶とシャドーイングで学びたいことをシェアし始まった。その日は主に外来の予約患者をみることが多く、電話で相談または外来での患者対応を行った。電話相談では、患者の症状にあわせて受診を勧めるなど具体的なアドバイスをし、必要であれば内服薬の増減の指示をしていた。イギリスのCNSは、指定の教育を受ければ薬を処方することができる。処方の権限がなければ、その都度担当医に相談しその結果を患者に伝える。

外来では、受診した患者の状態を元に医師に報告したり関係部署に連絡を取ったりなど橋渡しの役割も担っていた。CNS2人で約150人の患者をカバーしているそう。病棟看護師と異なり、CNSの人数は限られているため仕事量が多く責任が重い印象を受けた。

担当してくれたCNSはコミュニケーション能力が高く、短時間でも患者の信頼を得ていた。医師や他の医療従事者と連携をスムーズに取っており、チームワーク力も素晴らしかった。半日という短時間だったが、CNSの役割を知れて良い勉強となった。

CNSの仕事については、各病院や科によって異なるためこれがすべてではないことをご了承ください。

シャドーイングの収穫

今回のシャドーイングCNSの仕事が自分のやりたいことと合っているか確かめる良い機会になった。これが自分のやりたいことだと確認できて今後も頑張っていこうと思った。

あとは、繋がり(コネクション)を作るためにもシャドーイングは多いに役立った。欧米社会ではコネクションが重要でスキルだけでなく誰と知り合いか(繋がっているか)によってチャンスが広がる。顔と名前を覚えてもらうことで次に何か繋がれば良いと思う。

担当者が人手不足で人員が必要だと言っていたため「私にできることがあれば何でもやります」とアピールしてシャドーイングを終えた。

CNSになるためには相応の経験と努力が必要であり、海外で現地人と同じ土俵で戦うには言語面でのハンデは否めない。平日勤務、夜勤なし、専門性の高いポジションであるため競争率は高い。外国人看護師が多い私の病院でもCNSレベルまでいくと白人が多く、外国人にとって不利であることは感じている。このハンデを今後どう克服していくかが課題になりそう。ロンドンには多くの病院があり、人の出入りも活発なため地方に比べたらキャリアアップするチャンスがあると思う。そのチャンスを活かしてこれから頑張っていきたい。

ABOUT ME
Mari
Mari
日英看護師。2012年看護師免許取得。総合病院勤務を経てカナダへ医療英語留学を経験。2021年に渡英しイギリス看護師免許を取得。ロンドンNHS病院の循環器病棟に勤務。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。