2023年からイギリス看護師になるための要件である、英語試験(IELTS, OET)のスコアが一定の条件を満たすことで緩和されるようになった。この変更によって日本人看護師がイギリスで看護師になれるチャンスがより増えたといえる。大まかな条件と現役イギリス看護師として考える注意点についてシェアしていく。
英語試験の緩和の背景
まず、イギリスのNHSは深刻な人手不足に直面している。看護師を含めたすべての医療スタッフが不足している状況ですでに必要なスタッフ数より15万人以上少ない人数で運営されてている。この人手不足は、現在の傾向が続けば2036年には57万人以上にまで増える可能性があると言われている。
参考元:NHS staff shortages in England could exceed 570,000 by 2036, leaked document warns
この人手不足を担っているのが外国人看護師であり、今回シェアする英語試験の緩和はより多くの外国人看護師を増やすためのひとつである。人手不足による労働環境の悪化が離職原因に繋がっていて、職場にもよると思うがイギリスで看護師として働くのはタフである。
英語試験と条件について
現在、イギリスで看護師になるためにはIELTS7.0(ライティングは6.5)、OETはB(ライティングはC+)を取得する必要があるが、一定の条件でスコアが緩和される。
(必読)参考元:Accepted English language tests
その条件とは、1つのセクションにおいて必要スコアにわずかに届かなかった場合で(IELTSで0.5点以内、OETでひとつ下のグレード)2つの試験スコアの組み合わせをするときに適応される。スコアの足りなかったセクションにおける英語力を証明する補足的な証拠として、イギリスの雇用主からの情報を提出することで規定の英語試験のスコアが免除される。
これが適応されるには他にも条件がある。
- 申請の時点でイギリスの医療・介護現場で非登録の職種(資格なし)で働いていること
- 申請の時点でその職務で少なくとも12ヵ月以上フルタイム(パートタイムはフルタイムに相当)で従事していること
- この職務においてNMC登録者をマネジャーとして持ち、少なくとも6ヶ月間同じマネージャーを持つこと(12ヶ月間またはフルタイムに相当する期間、最大2名までのNMC登録をしているマネージャーからの情報を認める)
他にも注意事項があります。必ず上記の参考元であるリンクの確認をお願いします。
上記の条件は、YMSビザまたはイギリスで就労できるビザがあり、NHSまたはプライべートでヘルスケアアシスタント(HCA)として実務を1年以上を積み、英語試験にわずか足りない日本人看護師に当てはまる。多くの条件はあるがスコアがあと一歩、わずか足りない場合に実務経験と上司からのサポートによって認められるのは大きい。
英語試験をクリアしないリスクを考える
看護師は人の命を扱うため言語は最も大切な能力のひとつであり、一定の語学力を持つことは外国人看護師としての責任である。ただ、英語試験で英語力を測るのは限界があり、どのスコアに設定するかは意見が別れる。私個人の意見としては、特に英語にバッググラウンドがない日本人看護師は、現在の規定スコアが最低限必要だと思う。今回の条件を活かせるのは、英語を公用語として日常的に使っている、看護教育を英語で受けているなどの英語に強いバッググラウンドを持つ外国人看護師だ。
英語力の他にもコミュニケーション能力が求められる。日本とイギリスでは求められるコミュニケーション能力(スタイル)が異なり、イギリスでは自分の意見を主張する力が重要視される。受け身の日本人にとっては、言語運用力以外の面も壁になりやすいことは知っておいて損はない。
こういった壁を少なくするためにヘルスケアアシスタントとしての実務経験を通して英語力・コミュニケーション能力・医療英語力を最大限向上させて看護師として臨床現場に出るのは良いと思う。それだけ実際の現場で得られることは大きいし、イギリスで看護師として働きたいか判断する機会にもなる。働きながら自分の英語力が仕事で問題なく通用するか判断してみても良いと思う。
魅力的な条件とはいえ、英語試験で一定のスコアを取る必要は変わらないし、いつ変更されるか分からない条件を頼りにするのは危うい。また、上司から言語に問題がないと認めてもらう必要があり、どのくらいの上司が好意的にサポートしてくれるかは正直分からない。もし言語力の不足が原因によるミスがあった場合は、認めた上司の責任も問われるからだ。
個人的にはこの条件を頼りに申請するのではなく、リスクを理解しながらバックアッププラントして持っておくくらいの意気込みで進めたら良いと思う。