イギリスで看護師として働く

2024/25年版|イギリス看護師の給料の問題点

イギリス看護師の給料の問題点

今回は、イギリスで働いて感じたイギリス看護師の給料の問題点について書いてみたいと思う。

アップデートされない給与体系

現在の国営病院(NHS)の給与体系(Agenda for Change)は、2004年につくられた。それ以来、物価に合わせて賃上げはされているが、各医療職の役割や責任を反映したバンドの見直しはされていない

薬剤師を除く、看護師・理学療法士・作業療法士・放射線技師などの多くの医療従事者がバンド5から開始する。

20年の間に医療は大きく発展し、看護師(他の医療職も)の役割と業務も増えていったが、給与体系はそういった時代の流れが考慮されていない。

バンド5の給料の低さ

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上記で前述した通り、バンド5だと平均年収に到達するまで3~5年かかる。心身ともにもハードな仕事なので、せめて夜勤と週末勤務をしたら新卒から平均年収を超えるようにして欲しいと思っている。

バンド5の壁

イギリスの看護師給与における最大の問題点は、多くの看護師がバンド5にとどまっていることにある。

2023年の調査によると、43%の看護師がバンド5である。つまり多くの看護師が一番給料の低いバンド5で働いているということになる。

参考:NHS Workforce Statistics 2023

Institute for Fiscal Studies(IFS)が公開した2024年の調査結果がとても興味深かったのでシェアしたい。この調査は、2012年にバンド5であった看護師が2021年時点でどのバンドにいるか追跡したも。NHSで9年間勤務を続けた看護師のうち、35%がバンド5にとどまっていることが明らかにされた。

参考:Progression of nurses within the NHS

キャリアアップをすればバンド6以上にもなれるが、全員が昇進できるわけではない。昇進すれば責任が増えるためバンド5の役割のままでいたい人もいる。また、昇進したくても空きがないため昇進のチャンスを得られない人もいる。現在の給料体系は、一見平等なようで公平ではない。

ちなみに救命士と助産師は、規定の研修を修了すれば自動的にバンド6に昇進する。こういった差は、職業間の不公平を生む原因にもなっている。

このIFSの調査はかなり踏み込んでおり、地域によって昇進のスピードに差があること、男性のほうが女性よりも昇進スピードが速いこと、またバンド6以上への昇進に人種による大きな差があることも報告している。この調査結果は私の実際の経験とも一致している。

バンドが標準化されていない

以前の記事でも紹介したが、NHSのバンドには標準化されたものはなく、各トラスト(病院の集合体)にゆだねられている。

一般的なバンドと役職はどのトラストにも共通しているが、本来ならば上位のバンドがやるべきことを下位のバンドにやらせていることが往々にしてある。どのトラストも財政が厳しいので人件費の削減の影響でこういったことが起こりやすい状況にある。

  一般的なバンドと役職:

バンド5 スタッフナース
バンド6 シニアスタッフナース、ジュニア師長、スペシャリストナース、リサーチナース、エデュケーターなど
バンド7 師長、クリニカルナーススペシャリスト、シニアエデュケーター、シニアリサーチナース、ベットマネージャー、ナースプラクティショナーなど
バンド8~ アドバンスナースプラクティショナー、メイトロン(シニアナース)、ナースコンサルタントなど
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看護師の経済状況

イギリスの看護師は、社会人から看護師になら人が結構多い。社会人を経て看護師になった人は、子育て中(イギリスの保育料は高額)、家のローンを支払い中の人も多くいる。

また、大学の費用を返済している人もいる。子育て、家のローン(または家賃)、学費ローンと経済的な負担が多い人にとっては、バンド5の給料だと生活が苦しい人もいるだろう。

実際に暮らしてみて

私は最初の一年半、病院の激安寮(£500:光熱費・カウンシルタックス・wi-fi込み)に暮らしていたので、経済的には恵まれた暮らしをしていた。移住した2021年当時は賃上げ前で給料が低かったけど、寮に住んでいたおかげでかなり助かった。

その間に2回の賃上げ、日本での経験が給料に反映されたこともあり、寮を出たあとも物価の高いロンドンでも耐えうる生活ができている。これはパートナーと暮らしているおかげでもある。平均的な収入であれば、イギリスでの生活は2人分の収入で余裕がうまれると感じる。

おわりに

イギリス看護師の給料が良いか悪いか、それぞれの経済状況によって感じ方は異なる。ただ、物価の高いイギリス(ロンドン)でも看護師の給料で生活していくことは可能だし、家を購入し子育てをしている人もいる。

私は今の給料に満足しているかと聞かれたら「満足している」と答える。2024年の賃上げでだいぶ改善されたし、昇進のおかげで経済的に安定することができた。

イギリス生活も4年目に突入し、海外生活の難しさにぶち当たるときもある。そんなときに思い出すのが吾唯足知(われ、ただ足るを知る)という言葉。足りていることを知り、何事にも感謝の気持ちを持つという意味が込められている。京都の龍安寺のつくばいにある言葉で知られている。

龍安寺のつくばい

辛いこともあるけど、海外で看護師になる目標を実現しやりたいことができている。応援してくれる家族と友達がいる。それだけで十分ありがたく幸せなことだと感じる。

ただ、私は看護職の未来のために今後も給与改善が必要だと考えている。現在の給与は、労働組合がストライキや政権交代を通じて獲得した2回の賃上げによるものである。今後も声を上げなければ、給料は変わらないままだろう。現政府はしばらく賃上げはないと明言しているし、今後も長い戦いになりそう。

ちなみに2019年までは外国人に課されるNHSのサーチャージ(IHS、£400)を外国人看護師も支払っていたが、これは外国人看護師が反発の声を上げたおかげで廃止された。IHSは現在では年間£1,035にまで値上がりしている。もし声を上げていなければ、この金額を支払わなければならなかったと思うと恐ろしい。

現在も看護師不足が深刻であり、国内での成り手も減っている。正当な賃金、そして安全な職場環境を整えるためにも、これからも声を上げ続けることは大切だと思う。

ABOUT ME
Mari
Mari
日英看護師。2012年看護師免許取得。総合病院勤務を経てカナダへ医療英語留学を経験。2021年に渡英しイギリス看護師免許を取得。ロンドンの大学病院(NHS)の循環器病棟にてシニアスタッフナースとして勤務。

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