病棟勤務(1~3年目)

イギリス看護師のキャリア|シニアスタッフナースになるまでの道のり

キャリアアップの道のり

イギリスで看護師として国営病院(NHS)働き始めて丸3年、念願のシニアスタッフナースへの昇進が決まった。看護師としてキャリアアップすることはイギリスで看護師になる前からの目標だった。

以前、ブログで紹介したようにイギリス看護師のキャリアは多彩で自分のやりたいことに合わせてキャリアを選択することができる。そしてキャリアアップは自分次第。

イギリス看護師の多彩なキャリアについてイギリスの医療は分野ごとに細分化が進んでいるため、看護師のキャリアも各分野ごとに細かく役職が設けられている。キャリアアップをするためは努...

イギリス看護師のキャリアアップ

イギリス看護師はバンド制が採用されていて、各バンドに応じて役職や給料が決まっている。外国人看護師と新卒看護師と同じバンド5から始まる。バンド5より上の職種は面接が必須で実務経験を得ながらキャリアアップをしていく。

キャリアアップをしたい理由

イギリスの看護師免許を取得する前からキャリアアップに興味があった。日本で看護師をしていたときもキャリアに興味はあったけど、実現にはいたらなかったのが心残りだった。

また、経済的により安定するためにもキャリアアップは重要だった。バンド5の場合、最大給与は£36,483(約710万円)だけど、バンド6になれば最大で £44,962(約880万円)まで上がる。ロンドンには大都市手当があり、私が勤める新しいポジションの最大給与は£52,708(約1000万円)になる。これは基本給のため夜勤と週末勤務があれば、その分プラスされる。

昇進すれば責任も増えるため、給与と責任を天秤にかけてあえて昇進しない人もいる。なにが良いかは人それぞれであり、価値観やライフステージに合わせてキャリアを選ぶことができる。

キャリアアップの道のり

キャリアアップは一日してならず。目指すキャリアのために必要なものは何かリサーチして行動していくことが必要だと思う。私が病棟のバンド6シニアスタッフナースになるまで行動したことをまとめていく。

職場に慣れる

海外で新しい環境に飛び込むのはエネルギーがいる。まずは職場に慣れることから。業務を一通り自立して安全に行えるようになること、そしてチームの一員として同僚と協働するを日々のシフトで実践する。

キャリアの選択肢をリサーチする

イギリス看護師のキャリアは多彩なので、どのような分野に興味があるか働きながら探り、そのキャリアを目指すためには何が必要なのかリサーチする。

キャリアコーチングを受ける

一年目のときに勤務先が主催するキャリアクリニック(コーチング)を受けた。このコーチングのおかげで興味のあるクリニカルナーススペシャリスト(CNS)のシャドウ研修をすることができた。

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また、バンド6を目指すにあたり日本人でイギリス看護師として働く先輩にコーチングをしてもらった。経験談に基づくアドバイスが一番役立つし、ロールモデルとなる人ができたので良かった。

イギリス看護師のキャリア|病棟シニアスタッフナースの役割と給料イギリスで看護師としてキャリアアップする 国民医療サービス(NHS)で働くイギリス看護師はバンド制になっていて、役職ごとにバンドと給料...
大学コースを履修する

キャリアアップを目指す上では教育を受けていることも重要視される。多くのNHSでは、大学のコースに年間£1,000(約19万円)まで支援してくれる制度がある。私はこの制度を利用して大学のコースを受講した。イギリスの大学または院レベルの教育を受ける機会を得ることができるし、課題ではアカデミック英語の向上・文献レビューの仕方を学ぶことができる。

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看護技術を習得する

目指すキャリアに必要な看護技術を習得する。イギリスでは看護技術を実施するためには研修を受けて技術チェックに合格する必要がある。キャリアや職場によって異なるのでどのような看護技術が求められるかリサーチが必要だ。

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面接対策をする

キャリアアップには面接が必須。どれだけ努力して経験とスキルを磨いても面接でのパフォーマンスが悪ければ採用してもらえない。キャリアアップに関しては日本と異なるところがたくさんあり、求められる人物像・質問内容などの違いを理解した対策が必要である。

転職する勇気をもつ

ポジションに空きがなければチャンスは巡ってこない。離職率の高い職場であれば、何をしなくても数年以内にチャンスは巡ってくるが、そうでなければ転職することも必要になってくる。

自部署で昇進のチャンスがあれば、それが一番スムーズに昇進しやすい。私は自部署で昇進しようと思っていたけど、その過程で色々あり転職を決めた。コンフォートゾーンから出るのは勇気がいったけど、自分のやりたい分野での仕事、労働条件の交渉とすべて自分の希望が叶ったので満足している。

周りと比べない

キャリアアップを目指していると周囲と比べがちになる。外国人としてさまざまなハンデを抱えているから自信を失いやすく、上手く行かないときには悩みがちになる。そんなときに同僚が次々と昇進していく姿を見るとと心中穏やかにはいられない。心中穏やかでないと、上手くいくことも上手くいかない。どんなときでも腐らず、周りと比べず、自分のやることに集中するのが大切だと思う。

バンド5から6になるまでにかかる時間

キャリアアップには運・コネクション・タイミングに左右されるため、一般化したり比較するのが難しい。人にもよるので一概には言えないが、病棟でシニアスタッフナースを目指す場合なら最短一年半で可能だ。

海外経験のない日本人看護師の場合、本来のスキルを発揮できるようになるまでには約3年かかると感じる。文化の違いへの適応、イギリスで求められる対人スキルの習得、日本ではありえないトラブル対応など、日本では経験しなかったことへのスキルが求められるため、適応するまでには数年かかる。3~4年目経てば、いろんなことへの対応ができるようになり、自信もついてくるのでキャリアアップにちょうど良い時期だと感じる。

チャンスの宝庫、ロンドン

ロンドンには病院がたくさんあり、離職率が高いためキャリアアップのチャンスが郊外より多い。また、外国人にもキャリアアップの道が開かれている。外国人としてキャリアアップを目指すならロンドンがベストな都市だと思う。

キャリアアップの壁

キャリアアップは誰にもでもチャンスはあるが、実際には多くの見えない壁がある。

2012年から2021年までにNHSで働いた看護師のキャリアを追った調査では下記のことが明らかになっている。

  • 黒人・アジア人看護師より白人看護師のほうが昇進しやすい
  • ロンドンで働く看護師は郊外で働く看護師と比べて昇進が速い
  • 男性看護師のほうが女性看護師より速くバンド6に昇進する
  • 若い看護師は年上の看護師より速くバンド6に昇進する

この統計は実際に現場で働き、見聞きしていることと一致している。壁は目に見えないし、評価が難しいが、数字にすると実態が見えてくる。ここに外国人という要素が加わった場合、さらにキャリアアップの難易度は上がる。

こういった現実は厳しく感じるが、さまざまな格差を明らかにする調査を公的に行っているのがイギリスの良いところだと思う。さまざまなバッググラウンドの人がいるイギリスでは格差が生まれやすい。それを「仕方がないこと」で片づけるのではなく、改善のために色々なアクションを起こしているのは素晴らしいことだと思う。あまり改善がみられていないのが現状だが、近年は外国人看護師が増えてグローバル化が進んだので、これからまた変わっていくと期待している。

参考:Progression of nurses within the NHS

これからの目標

私の目標は今も変わらずCNSになること。でも、シニアポジションの経験して副師長・師長職にも興味がわいてきた。病棟はストレスレベルが高い環境だし、責任が相当重いので本当にやりたいかどうかはまだ分からない。新しい職場でバンド6としての経験を積み、これからどう感じるかみていきたいと思う。

あとはキャリアアップを通して、たくさんのことを学んだからイギリスや海外でキャリアアップを目指す人のサポートをしたい。現在は自分のできる範囲内でイギリスで働く日本人看護師の友人、同僚の面接練習・キャリアアップのサポートをしている。誰かの目標を応援しサポートすることに楽しみとやりがいを感じる。これからもワークライフバランスとメンタルヘルスを大切に、自分のペースで頑張っていきます🐰🐢

ABOUT ME
Mari
Mari
日英看護師。2012年看護師免許取得。総合病院勤務を経てカナダへ医療英語留学を経験。2021年に渡英しイギリス看護師免許を取得。ロンドンNHS病院の循環器病棟に勤務。

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