イギリスの多くの国立NHS病院では12時間シフトを採用している。1日を半分に分けたシフトで日勤と夜勤で構成されている。
前回は12時間シフトの日勤の一日の流れを紹介した。今回はイギリスNHS病院で働く看護師の夜勤の1日のスケジュールを紹介する。
私が勤務する病院について
- ロンドン中心部
- 循環器病棟(一般病棟)
夜勤の一日のスケジュール
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19:30 勤務開始
日勤者からの申し送りが始まる。まずは日勤責任者からの全体の申し送りをスタッフ全員で聞く。夜勤も日勤と同じく日本では患者の情報収集をするために始業前に出勤することが多い。日勤編でも書いたようにイギリスではこういった前残業は一切ない。
申し送りは、日勤担当者から直接申し送りを受ける。患者の病名・入院理由・入院してから現在までの流れをすべて申し送る。患者の目の前で申し送りを行う病院もあるが、私の勤務する病院はナースステーションで行う。
前残業について
日本の大学病院・総合病院で働く場合、勤務前の情報収集はその日の勤務を円滑にするために欠かせない。始業開始前に患者の状態を把握しておけば勤務開始時間からすぐに対応できる。勤務開始前に患者の状態を把握しておくことは当然のことで私の経験では若手やベテラン問わず、ほとんどのスタッフが始業前30分~1時間前に出勤して情報収集をしている。
なぜ前残業があるのか、私の意見になるが始業前の準備が勤務時間としてみなされていないことが大きい。また、仕事量が多いため始業前に頭の中で整理・準備しておかないとスタート時点でかなり出遅れることになる。日本人看護師の強い責任感から成り立っていると思う。始業前に患者のことをすべて把握しておかないと勤務が心配になるくらいだ。
イギリスに来る前は始業前の情報収集なしでどうやって働くのだろうと思っていたが、やってみたら意外とできた。業務の負担軽減さえできれば日本でも始業前の残業は撤廃できるはず。
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20:00~30 挨拶、夜の配薬
申し送りは患者の情報全般を申し送るため時間がかかる。状況にもよるが20~50分くらいかかることもある。
申し送りを受けたあとは患者に挨拶をしにいく。ベッド回りの安全の確認をしたあとは検温(血圧などの測定)を始める。
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22:00 夜の配薬、翌日の検査・手術の準備
夜の配薬をしたら翌日に検査や手術がある患者の準備をする。
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23:00 記録
患者の状態にもよるが、夜の検温は遅くても23:00までには終わる。終了すれば記録に取り掛かり、仮眠の順番を決める。
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00:00 ~06:00 色々な業務と仮眠(1時間半)
ナースコール対応をしながら記録を終わらせる。体調に変化がある患者があれば、その都度当直医に報告し対応する。
仮眠は深夜から朝方にかけて順番でとる。仮眠は1時間半で食事休憩はなし。状況に合わせて水分摂取や食事をとることもできる。
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05:30 ~6:00 朝の検温、当日入院対応
眠気が高まってきたところで朝の検温が始まる。患者の快適な睡眠を守るためにも6時より前に起こしたくないが、受け持ち患者人数や業務量によっては起こさざるをえないときもある。
当日入院し当日検査または手術を行う患者は、夜勤帯の朝の時間に入院する。朝の忙しい時間帯に検査・手術に向けて準備をするのは結構な体力を使う。
- 07:00 申し送り
日勤者に申し送り。申し送りが終わった時点で帰宅する。早く終われば数分から数十分早い場合もあるし、その逆で遅れるときもある。日勤と同じく自分の仕事が終わったらさっさと帰る。
残業について
申し送りが長引き数分から数十分残ることがあっても、30分を超えるような残業は今まで経験したことはない。仕事が終わらなかったたら次の勤務者に引き継ぐ。
仮眠について
病欠やその日の忙しさにもよるが、基本的に仮眠は取れれいてる。本来なら眠るはずの時間に働いているため仮眠なしのノンストップで働くのは心身ともに本当に辛い。
日本との違い
イギリスは連続夜勤が基本であり、日本との大きな違いとして挙げられる。連続夜勤は3日間がセットになっている場合が多く、12時間夜勤を3日連続で行う。
日本とイギリスの夜勤のどちらラクかよく聞かれるが、個人的に夜勤勤務にラクという表現は使いたくない。寝ている時間に起きて身体を動かし、患者の命を預かる環境にラクや余裕はないからだ。
表現を変えて、どちらが辛いかといえば圧倒的に日本の夜勤が過酷といえる。その理由は業務量の多さ、煩雑さ、患者の介助量の多さにある。2交代の場合は16時間夜勤+数時間の残業になるため身体へのダメージも大きい。30代でも夜勤ができるのは残業なし、有給消化がきちんとできる労働環境にいることが大きい。