イギリス看護師、3年間の振り返り
イギリスで看護師になってからたくさんのことを学んだ。看護師としても人としても大きく成長できたと感じる。楽しいこと、辛いこともあったし失敗したこともあった。この3年の間に内面が別人級に変わったので(大げさだけど本当にそう思う)振り返りをシェアしたい。
イギリスに移住した2021年秋は新型コロナ真っ只中で到着後はPCR検査と隔離が必須だった。社会事情に強く影響された3年間で、イギリスのEU離脱と新型コロナによる看護師不足、急激な物価上昇と厳しい環境下におかれていたと思う。
言語のハンデ
働き始めて感じたのが言語のハンデだった。特別な英語のバッググラウンドなし、数ヵ月の語学留学の経験のみで就労の場に飛び込んだから最初は苦労した。その苦労から自信を失い、劣等感を抱くようになった。
月日ともに現場に慣れてきた頃に大きなことに気が付いた。今まで職場内外で発言が上手くできないことを言語のハンデによるものと思っていたけど、実際は自信がないこと、劣等感が足を引っ張っていることに気付いた。また、欧米と日本のコミュニケーションスタイルの違いもあり、そういった違いに適応するのも難しかった。
キャリアアップ
働き始めてから割とすぐにキャリアアップの準備を始めた。まずは日々の業務を修得することから始め、キャリアアップに必要なコースを受講した。
大学のコースで初めてアカデミックな課題に取り組み、文献検索と文献レビューの基本を学んだ。これをきっかけに文献を読むようになり、日々の学習にも取り入れるようになった。
キャリアアップのために受講したナイチンゲール財団主催のリーダーシップコースは、欧米のリーダーシップスタイルと教育を全身で学ぶ機会になった。コースの一貫で初めてQuality Improvement プロジェクトに取り組んだ。イギリス全土から集まった優秀な仲間と一緒に学び、毎回インスパイアされた。
次のステップとしてクリニカルナーススペシャリストのジュニアポジションに応募したが、残念ながら不採用だった。この面接をきっかけに対策に力を入れたおかげでシニアスタッフナース(Band6)の採用をもらうことができた。今年の冬から新しい職場で心不全を専門にした部署で働く。
自信のなさ、劣等感の克服
イギリス看護師になってからの3年間は自信のなさと劣等感を克服するための時間だったと思う。
一番成長できたのはインチャージ(リーダー業務)をやったことだった。インチャージは勤務帯の責任者となり、病棟をマネジメントをする役割だ。日本のリーダー業務と違って日本では絶対にありえないことに対して次々と迅速かつ柔軟のある対応を求められる。
インチャージをすると他部署のスタッフとも関わるので交友が広まり、連携・協力を通してコミュニケーションスキルが磨かれた。
今年の秋に院内の看護師ポスターイベントでQIプロジェクトを発表した。イベントには師長より上位職や看護部のトップを含めたたくさんの人が集まった。以前の私なら大勢の人の中で埋もれ、ただ時間が過ぎるのを待っていたけど、このときは違った。自ら参加者に声を掛け、上司の助けを借りてトップの人にQIプロジェクトについて話すことができた。自然体のままでソーシャライジングをすることができたのは初めての経験だった。
院内の看護師ポスターイベント。今年取り組んだ水分出納バランスのQIプロジェクトを提出。看護師主導のカテ治療やプログラムがたくさんあって、改めて🇬🇧看護師のポテンシャルの高さを感じた。 pic.twitter.com/PUVKCRbFoW
— MARI (@MariNursing_uk) October 4, 2024
欧米ではソーシャライジングスキルが重要視されていて、ビジネスに関わらず色々な場でコミュニケーションをとる機会が多い。このときにどのようにソーシャライジングするかがスキルの見せどころである。渡英当初に永遠に無理と思っていたソーシャライジングの場も、思わぬ形でスムーズに終えることができた。
自分の良さを伸ばす
イギリスと日本では求められるスキルがまったくと言っていいほど異なる。普通に働くだけなら真面目で勤勉に働く日本人は評価してもらえるが、キャリアアップをしたい場合は真面目に働くだけでは足りない。そのギャップを埋めるためにイギリスで求められるスキルをリサーチし、身に付けていく日々を送っていた。
この話をイギリスに住む日本人看護師の友達にしたときにハッとする指摘を受けた。
「Mariちゃんには、Mariちゃんの良さがある。それを失くさなくても良いんだよ。」
「良さを伸ばすのも大切だよ。」
何で今まで気づかなかったんだろう。
外国人としてのハンデを乗り越えるために奮闘していたけど、過剰適応になっていたことに気付いた。
イギリス、特にロンドンの良さは多文化への寛容性にある。イギリスにいるならこう振る舞うべき、というルールはないから自分が持つアイデンティティを大切にすることができる。そこがロンドンの良さで大好きだったことをすっかり忘れていた。自分の良さを異文化の中でどのように伸ばしていくかは、これから模索してみる。
すでにイギリスに移住してから4年目が始まっている。これからどんなことを経験し学んでいくのかが楽しみ。