前回、イギリスで看護師を日本で目指すルートを紹介しました。イギリスの看護師資格を取得するのは、日本やイギリスのどちらからでも可能です。(もちろん他の国からもできます)どちらの国から目指すのが良いかは、日本とイギリスそれぞれに拠点を置くかによりますが、それぞれメリットとデメリットがあります。イギリスで看護師を目指す方が、自分にとって最適なルートを選ぶ手助けとなるよう、この記事を執筆しました。
今回はイギリスを拠点にイギリス看護師を目指すルートを紹介します。本記事は国営病院(NHS)で看護助手として働きながらイギリス看護師を目指す方法を中心にまとめています。
イギリスで目指すルート
イギリスを拠点に目指す場合は滞在するためのビザが必要です。
イギリスで滞在が認められるビザ
- YMSビザ(ワーキングホリデービザ)
- 学生ビザ
- 観光ビザ
- パートナービザなど
看護助手として働く
イギリスを拠点に目指す場合は、NHS病院で看護助手(ヘルスケアアシスタント=HCA)として働きながら申請手続きを進めることがおすすめです。
30歳以下の場合、YMSビザを利用してイギリスに2年間滞在できます。学生ビザや観光ビザも申請可能ですが、収入や職歴が一時的にストップするデメリットを考慮した上で決めることをおすすめします。
HCAは日本の看護助手にあたりますが、業務内容は日本の看護助手と比べて多岐に渡ります。収入を得ながらイギリスの医療現場の実際を学び、英語試験の学習を並行して進められることができます。YMSビザであれば2年間イギリスに滞在することができるため、英語試験を突破するためにまとまった期間を確保することもできます。
HCA就職に必要なもの
HCAとして就職するためには必要な書類がいくつかあります。基本的にNHSの人事はかなりゆっくりのため仕事のオファーを受けてから勤務するまで数ヵ月待つこともあります。ロスタイムを減らすためにも日本でできることは日本で済ませておくことがベターです。
履歴書(CV)準備
英文の履歴書は渡英前に必ず準備しましょう。面接に呼ばれるCVを作成できるよう必ずネイティブにチェックをしてもらいます。
過去3年分のリファレンスレター(または2通)
海外就職ではリファレンスレターが必須です。NHSは基本的に過去3年分のリファレンスを求められることが多いです。職場によっては2通のみで良い場合もあります。リファレンスは勤務先の上司2名に協力してもらいます。リファレンスもネイティブにチェックをしてもらいましょう。トラスト(病院のグループ)によっては所定の書類に記入を求めらることもあります。
ワクチン摂取歴(英文)
医療職として働くためワクチン摂取歴の証明が必要です。今までの摂取歴と母子手帳の和訳を準備しておきます。
HCA求人を探す
求人探しは主に以下の2つの方法があります。
- 興味のある病院のサイトから募集を探す
- NHS Jobsで求人を探す
フリワード・職種ともにHCAで検索します。気になる求人があったら応募し先方からの返事を待ちます。
HCAの給料
NHS病院はペイスケールに基づきBand毎に給与が一律に決められています。HCAはBand2にあてはまります。Band2の年収は £22,383(約416万円、2023年11月のレート換算)ほどです。ロンドンで働く場合は大都市手当がつきます。中心部であれば£26,860(約500万円)もらうことができます。上記の基本給に加えて夜勤手当と休日手当が加算されます。その他、日本にある交通費や家賃手当の補助はありません。
参考:Agenda for change – pay rates , NHS London Weighting Salary 2023/2024
イギリスで目指すメリット
① イギリスで臨床経験が得られる
実際にイギリスで臨床の経験を得られることが最大のメリットです。イギリスでのHCA就活、経験は正看護師の就活でも役立ちます。HCAで働いた経験は正看護師になってからも役立ちますし、HCAから看護師への移行もスムーズにできると思います。
② 言語のハンデをうめられる
日常会話や医療英語に事前に慣れる時間を持つことができます。イギリスで看護師を目指す外国人看護師の多くは、母国で看護を英語で学んでいるため言語のハンデが日本人と比べたら圧倒的に少ないです。日本人看護師の場合、この言語的なハンデに一番苦労することが考えられます。HCAとしてイギリスで暮らし働くことで得られる言語学習の機会は日本では得られない貴重なものです。
③ 経験者の情報を得やすい
イギリスにはHCAから看護師を目指す人が多数います。同じくイギリスで看護師を目指す外国人看護師がいれば最新の情報を得ることができます。一緒に目指す仲間に出会えるためモチベーションを保ちやすい環境です。
イギリスで目指すデメリット
① 経済的に厳しい
NHS病院の場合ですがHCAの給料は前述した通りです。大都市であればあるほど生活費がかかります。現在は円安傾向のため日本円にすると良い給料に見えますが、HCAの給料はイギリスの平均収入(£34,000~39,000)比べると180万円以上低いです。生活水準にもよりますが、HCAの給料は経済的にはあまり余裕はありません。
② 厚労省とのやり取りに時間がかかる
日本で手続きをどこまで進めるかによりますが、イギリスから厚労省とやり取りをする場合は日本と比べて時間がかかりやすいです。時差を計算して連絡を取らなければいけないこと、書類手続きは家族や友人などの助けが必須です。
③ 病院からの経済的なサポートが少ない
多くのNHS病院では、CBTを合格した外国人看護師を積極的に雇っています。外国から目指す場合、病院はさまざまなベネフィットが用意されていますが、イギリスから目指す場合は受けられるサポートが限られます。2023年以降、同僚から聞いた話ではこれらの経済的サポートが縮小されている傾向にあります。サポート内容は時期や病院によって異なる場合があるため確認が必要です。
💷 経済的なサポート
- IELTSとCBT受験料返金
- NMC登録費返金
- ビザ申請サポート
- ビザ費用返金
- 空港までの向け
- OSCE対策
- 初月の賃貸
私調べになりますが、地方の病院ほど多くのサポートがあり、都市部の人気のある場合は少ない傾向があります。今後、このベネフィットの内容は変化していく可能性がありますのでご注意ください。もしイギリスから目指す場合は上記のサポートに関して病院に交渉するのもありです。
まとめ
イギリスから目指すルートはビザや状況などその人の状況によって異なります。イギリスから目指す場合は、一定の収入とイギリスでの臨床経験を得られるHCAとして働く方法がおすすめです。
私の周囲にはYMSビザで渡英しのHCAとして働きながらイギリス看護師になった方はたくさんいます。私の友人であるYuikaさんはロンドンでHCAとして働きながらイギリス看護師免許を取得しました。
おわりに
イギリス看護師免許をイギリスで目指すルートを大まかにまとめました。同じルートでも人によって難易度やかかる時間はさまざまです。どちらのルートを選んでも事前の入念な準備は欠かせません。今回私がシェアしたルートは一例です。このルートをもとに自分の状況に合わせた計画の参考にしてみてください。