イギリスの医療と看護

2025年最新版|イギリス看護師の就職難ー新卒と外国人が直面する現実と対策

イギリス看護師の最新就職状況

現在、イギリスでは看護師求人が激減していて、特に新卒看護師の就職難が深刻な問題となっている。新たに免許を取得した外国人看護師にとっても、ビザスポンサーをしてくれる職場が見つからず非常に厳しい状況になっている。

看護師だけが就職難というわけではなく、資金不足により国民医療サービス(NHS)全体で採用停止や採用凍結が行われている。

参考:Newly registered nurse jobs crisis: ‘Use us or lose us’

2025年版|イギリス看護師の就職状況ー最新情報と対策イギリス看護師の就職状況 2024年からイギリス看護師の就職難について取り上げてきた。2025年もあと少しで上半期が終わろうとしている...

2025年下半期の状況

去年と比べて全体の求人数はかなり少ない。求人の統計を見つけられなかったため、どれだけ減っているかをシェアできないが、体感的に確実に減っている。

王立看護協会(看護職の労働組合)の調査によると、すべてのバンド5の看護師の空きポストのうち、半数以上(59%)が求人として公開されていないと報告されている。

引用:Band 5 nurse jobs: why are half of NHS vacancies not advertised?

約6割の求人が削減されているため、臨床経験がない新卒看護師、そしてNHSでの経験がなくビザスポンサーのいる外国人看護師は圧倒的に不利で就職先を見つけるのが厳しくなっている。

バンド5とは

イギリス看護師は、バンドと呼ばれる階級制が取り入れられている。新卒看護師と新たに免許を取得した外国人看護師は、バンド5の看護師求人に応募する。

こういった理由もあって、私はイギリスで看護師を「いま」目指すことをおすすめしていない。英語試験や免許取得は努力次第で何とかできるけど、職やビザスポンサーは自分の努力ではどうしようもできないからだ。

今後の見通し

すでに年度に使える予算が決まっているので、今年度いっぱいはかなり厳しい。来年度は、また予算があらたに組まれるので、予算や分配次第では採用抑制と凍結の緩和が少なくとも期待できる。

イギリスに限らず、海外の外国人看護師の受け入れは、厳しくなったり緩和したりを数年スパンで繰り返している傾向がある。

イギリスは、2020年から2023年まで緩和して2024年から厳しくなった。今後数年は厳しい状況が続き、その後はまた状況が変わって緩和する動きがみられると思う。おそらく早ければ2027年、2028年くらいには緩和の動きがみられるのではと予想している。

あくまでも素人の予想ということをご了承ください。

ここ最近は排外主義の影響で移住するための条件が厳格化しているため、予測が難しいところはある。看護師の就業状況だけでなく、移民に対する国の動きも追うことも大切だ。

参考:英就労ビザの一部、大学入学レベルの英語力が要件に 来年1月からの新たな移民政策で

自国の新卒看護師を優先する動き

今年8月、新卒看護師の就職難の実態を受けて、新卒看護師が就職しやすいようにする政策が発表された。今のところ開始時期や実際どのような政策になるかは分からないが、”Guaranteed opportunities”と表現されているため、学生の就職先を保証する内容になると予想している。

参考:Job boost for newly qualified nurses and midwives

まだ導入の時期は決まっていないが、早急に導入された場合はさらに求人数が少なくなるため、新たに免許を取得した外国人看護師の就職はますます厳しくなると思う。

就職難の対策

現在の状況をふまえて、イギリス看護師について相談を受けるときに伝えていることをシェアします。

来年度になるまで待つ

来年度(2026年4月)になれば、新たな予算でスタートするため、就職状況がまた変わることが期待される。正直なところ、今年度の就職は外国人看護師にとってかなり厳しい。日本にいる場合は、お金と時間をかけてイギリスに来て就活するより、状況が改善するまでは日本で待つ勇気を持つことも大切だと感じる。

他の国を選ぶ

すでに英語試験を突破している人は、他の国を考えてみても良いと思う。英語試験には有効期限があり、免許取得までの時間・お金・労力を考えると、すでに英語試験を突破している人があえて現在就職が厳しいイギリスにする理由はあまりないのではと思う。すでにイギリスの看護師免許を持っている人は、オーストラリアやニュージーランドでの書き換えもできる。

YMSビザを利用する

30歳未満であれば、YMSビザを利用することができる。そうすればビザスポンサーは不要になるためかなり有効な選択肢になる。ただ、YMSビザは永住権の滞在期間にカウントされないため、永住権までの道のりが少し長くなることに注意が必要。そしてYMSビザ終了後にビザスポンサーをしてもらえるように交渉をしておく。

配偶者ビザを検討する

配偶者ビザではあれば、ビザスポンサーの問題がなくなるため就職がしやすい。そしてパートタイムの求人にも応募できて、転職もしやすいので就労の面ではメリットは大きい。

イギリス看護師のビザ(医療・介護従事者ビザ)のデメリットについてイギリス看護師のビザ(医療・介護従事者ビザ)のデメリット 以前、ブログで海外で看護師になるためには、英語力・資金・努力が必須だと書いた...

相手がいることだし、ビザ費用は高額なので簡単ではないが、パートナーがいる人は相談してみると良いと思う。

エージェントを利用する

英語試験を突破した人、そして免許を取得した人におすすめなのがエージェントを利用すること。エージェントを利用すれば、イギリスに行かなくても就活ができるし、エージェントが持つ求人を紹介してもらえる。

利用する場合は、政府から認可を受けたエージェントを利用することを強くおすすめする。エージェントにとっては、外国人看護師は「金のなる木」なので、カモにならないように気を付けて欲しい。

エージェントリスト:Ethical recruiters list

UK就活体験記②|就職手続きから再就活を決断するまで この記事はイギリスNHS病院の外国人看護師向けの求人についての就活体験記をまとめています。時期や状況によってイギリスの外国人看護師向...
求人サイトまたはトラスト求人ページを毎日チェックする

healthjobsuk.comで毎日求人を探し、気になった求人があれば応募する。私はここ2年くらい毎日求人をチェックしていて、色々な職や就職の動向をリサーチすることが日課になっている。たまにOpen dayや外国人看護師の求人を見掛けるので、少なくてもチャンスはある。

そして、トラストの求人ページを直接チェックすることもおすすめ。trac jobには載せずに、ひっそりとトラスト内の求人ページのみで掲載していることもあるので、そういった求人もキャッチできるようにしておく。

面接対策をしっかりする

以前は、そこそこできていれば採用をもらえたけど、現在はひとつの求人に多いと40人以上の応募があるほど競争率が上がっている。NHSで経歴のある看護師・現地の学生・英語のハンデが少ない外国人看護師と戦い、求人を勝ち取るためには、それなりの努力が必要になる。

まずは面接に呼ばれるようにSupporting informationを質の高いものに仕上げること、採用レベルに達するまで面接スキルを磨くことが必須になる。

今までの転職活動やサポートの経験を活かして、同僚やイギリス看護師のサポートをしている人の面接練習をしています。興味がある方はコメントや問い合わせから連絡ください。2024年以降、今まで面接練習をした2人が採用をもらっています😊

今後アップデートがあれば、またブログでお知らせします。

ABOUT ME
Mari
Mari
日英看護師。2012年看護師免許取得。総合病院勤務を経てカナダへ医療英語留学を経験。2021年に渡英しイギリス看護師免許を取得。ロンドンの大学病院(NHS)の循環器病棟にてシニアスタッフナースとして勤務。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。