非EU/EEA圏の外国人看護師がイギリスの看護師免許を取得するためには、三つの試験に合格する必要がある。
一つ目は、語学力試験でIELTSまたはOETを受けて必要のスコアを取得する。二つ目はCBTという医療と看護知識に関するコンピューターベース試験で日本でも受験が可能。この二つの試験に合格し、晴れて最終試験OSCEを受験することができる。
OSCEとは
OSCEとはObjective Structured Clinical Examinationの頭文字を取って”オスキー”と読む。イギリス看護師のOSCEは、実技試験で臨床看護技術とコミュニケーションスキルを評価する試験である。レベル的には新卒者向け、臨床で日々多く実施する基本的な看護技術を評価する。これに加えて看護計画の展開をするペーパーベースの試験もある。
OSCEの実技試験の例
- 皮下・筋肉注射
- 膀胱留置カテーテル抜去
- 点滴ルートのフラッシュ
- BLS(一時救命措置)
- 尿検査など
日本で臨床経験があれば、多くが経験のある手技のため技術的な難易度は高くない。問題は、一つひとつの手技について常に根拠を英語で説明しなければならないことだ。
日本で看護教育を受けた人にとってはOSCEの難易度はかなり高い。医療英語を覚え、試験に出る技術の一連の流れを記憶し、患者に説明するフレーズと根拠をすべて言語化を一度にこなすのは想像以上に難しい。
OSCE研修について
多くのNHS病院では外国人看護師向けのOSCE研修を行っている。特に英語にバッググラウンドがない日本人看護師はOSCE研修を絶対に受けることをおすすめする。
病院によって研修の質にはバラつきがあるため、OSCE研修内容・期間・合格率を事前に病院に聞いてみると良いと思う。
ちなみに私の病院のOSCEの合格率は100%で合格できずに帰国になった人はいない。それでも私のグループは初回で6~7割が不合格で悲しい経験をした。受験会場によって合格率に差があるため、できるなら合格率の高い会場を選ぶのも戦法のひとつ。私の場合は病院が一括して申し込みしたため、試験会場を選ぶことはできなかった。
参考:Pass rates and number of candidates
個人的な経験としては、研修期間は最低でも2~3週間が必要だと感じる。できれば研修(試験)終了後に勤務開始するのが理想だと思う。
OSCE研修の体験談
期間:オンライン研修1週間、実技試験研修3週間
時間:9:00~16:00(日によって異なる)
私が研修を受けたときは、渡英後に10日間の隔離が必要だった。隔離期間はオンラインではOSCEの概要についての研修を受け、隔離解除後に3週間の実技研修を受けた。
OSCE対策
OSCE対策はこの下記の3つで十分対応できる。
- Marking Criteria
- 試験会場のポータルサイト
- 病院から支給されたテキスト
① Marking Criteria
マーキングクライテリアは、各スキルで試験官がどこを評価するか知ることができる。各試験会場サイトからMarking Criteriaはダウンロードすることが可能。
② 試験会場のポータルサイト
OSCE合格後、試験会場のポータルサイトにアクセスすることができる。そこにはOSCEの情報や各スキルで使用される実際の書式が見られるため、すみずみまで読んだほうが良い。
③ 病院から支給されたテキスト
病院から一連の流れがまとまったテキストが支給される。メモを取りながら自分のノートを作っていくのも楽しい。たくさんの資料をもらい最終的には約4cmの分厚さになった。
ネットを調べればたくさんの情報を得ることができるが、情報過多になりやすいため信頼できるテキストを集中してやりこむほうが効率がよい。
OSCEのポイント
自分でリサーチを
病院の研修に完全に頼るのではなく自分でもリサーチしたほうが良い。研修担当者がOSCEのすべてを知っているとは限らないし、試験内容は少しずつ変更されているため最新情報を自分でチェックしておきたい。
とにかく練習する
OSCEの合格は練習にすべてがかかっている。実技試験のため何度も繰り返し行い、試験前にはどのスキルもスムーズに実施できるまで仕上げたい。グループ内の友達と練習し、指摘し合って改善点を見つけていくのが良い。試験前に夜遅くまで友達と練習し励まし合ったのは今では良い思い出になっている。
自分に優しく
OSCEは実際にやってみないと分からない部分が多い。言語面でハンデがある日本人にとっては負担が大きいし、特に試験前は不安になることもある。異国の地で第二言語を使って試験に臨むのは想像以上にタフだし、不安になって当然のこと。休むときは休み、上手に気分転換しながら研修を乗り切りたい。
OSCE研修の体験談はYuikaさんの体験談も参考になります。研修が佳境に入った頃、辛過ぎてYuikaさんに連絡し、たくさん励ましてもらいました🥹
OSCE研修を振り返る
OSCE研修中は想像以上にストレスフルだった。正直、研修を3週間受ければなんとかなると甘くみていて本当にバカだったと思う。確かに3週間で何とかはなったけど、それは相応の努力をしてなんとかなるレベルだったことに研修が始まってから気付いた。
医療英語は数年前にカナダで学んでいたため、少しだけ知識はあったが臨床レベルには達っしていなかった。そのおかげでとにかく医療英語を覚えるのに苦労した。他の仲間は英語で看護教育を受けているため、言語面ではまったく問題がなかった。みんなが理解出来て当然の世界に私にだけ理解できない世界があり、これが一番辛かった。私だけ一人明らかに遅れていて取り残されている状況が毎日続いた。この状況でも頑張れたのはグループ内の仲間とYuikaさんの励ましのおかげ。
ちなみに参加者10人以上の中で英語で看護教育を受けていないのは私だけ。これにはさすがに衝撃を受けた。
参加者の出身国:アメリカ・インド・オーストラリア・ナイジェリア・フィリピン・日本
OSCE研修の費用や給料
OSCEの受験費用は£794(約13万円、1ポンド=163円)と高額である。再受験費用は半額以下になるけど、できるならば1回で合格したいところ。
私の場合は研修中の賃貸、OSCE受験料、会場までの往復交通費、前泊の宿泊代のすべてが病院負担で金銭的な負担が一切なかったのが助かった。費用負担については病院によって異なり、実費や給料から天引きなどさまざま。
私の場合、研修中はBand4の給料が支給された。一般の看護師がもらうBand5の給料と比べたらかなり額は落ちる。
研修中は病院の隣に馬がいるような田舎で出掛ける先はスーパーしかないようなエリアだったこともあり、隔離中を含めて人生で一番お金を使わない時期になった。
OSCE試験について
OSCE試験は会場と試験官によって左右される。私の試験官はフレンドリーで終始易しくサポートしてくれたので最後までやり切ることができた。
OSCE合格後
OSCE合格後にイギリス看護師免許(PIN)をもらうことができる。免許を取得した時点で給料もBand5へと変更になる。PINが取得できたら人事部に連絡し、PIN取得日からBand5の給料をもらえるようにする。
これからOSCEを受ける方へ
日本人にとってOSCEは難易度の高い試験ですが、研修を受けてしっかり勉強をすれば合格できる試験です。言ってしまえば単なる実技試験であり、看護師としての資質やスキルを直接評価するものではありません。この試験に合格したらイギリス看護師になることができます。大変なこともあると思いますが、自分を信じて頑張ってください。