イギリス看護師のビザ(医療・介護従事者ビザ)のデメリット
以前、ブログで海外で看護師になるためには、英語力・資金・努力が必須だと書いたけど、それ以上に重要なのがビザだと思う。どれだけ頑張ったとしても、滞在・就労許可であるビザがなければ海外で働くことができないからだ。
色々と考えた末に当時ビザが比較的取りやすかったイギリスを選んだ。確かに取得はしやすかったけど、デメリットもあり、ここ最近は頭を悩ませることもあった。
今回はメリットにも触れながら、私が実際に感じてきたデメリットをシェアしたい。
医療・介護従事者ビザについて
私はイギリスにHealth and Care Worker visaというビザで滞在・就労している。(ブログでは医療・介護従事者ビザと訳しています。)このビザは、スキルドワーカービザのサブカテゴリ―に属する医療・介護職に就く人向けの専用ビザで、他のスキルドワーカービザと比べて金銭面で優遇されている。
他のビザと比べると、申請費用や更新料が圧倒的に安く、さらに IHS(追加の医療保険料)が免除される点が主なメリット。この優遇は非常に大きくて経済的にかなり助かっている。
デメリット
転職しづらい
このビザは雇用主がスポンサーとなる。そのため転職すると雇用主が変わるため、同じ種類のビザであっても改めて申請し、申請料を支払う必要がある。
イギリスでは転職が一般的で、キャリアのためには転職することも時には必要になってくる。でも、雇用主が変わる度にビザを申請し直す必要があるため、簡単に決断しにくい。あと、転職先が良くなかった場合のリスクを考えると転職がしづらくなる。
だからこそ、私にとって転職は大きな勇気のいる決断だった。幸いにも転職先は恵まれた職場で、結果的に大正解だったと思う。ただ、もし過酷な職場だったら今頃は辛い思いをしていたかもしれない。

転職するとき、ビザの手続きに時間がかかって内定をもらってから実際に働き始めるまで約5ヵ月弱かかって、あのときは気が狂いそうになった。
ちなみに同じトラスト内での転職(異動)であれば、ビザの問題はない。転職したいときは、まずは同じトラスト内で探してみると良いと思う。
公的扶助が受けられない
このビザは、公的扶助を受けられることができない。失業・病気・収入不足に対するセーフティネットがほぼないのが大きなデメリットになっている。
自国の公的扶助を守るためとはいえ、厳しいビザの条件をクリアして高額なビザ費用を支払い、税金を納めているのにと思うところはある。
NHSに勤めていれば、失業のリスクは低い。ただ、健康上の理由で働けなくなったときなど緊急時には、自力で対応する必要があるのは頭に入れておく必要がある。
その他にもパートナーと別れて出ていくことになった、パートナーから家庭内暴力を受けて避難する必要があるなどの状況に陥ったとしても、公的扶助は受けられない。緊急時に対応できるように常に一定のお金を確保しておくのが安心だと思う。
永住権取得までに5年かかる
医療・介護従事者ビザの場合は5年間、継続してイギリスに住むことが必要になっている。※YMSビザや卒後ビザは永住権の期間としてカウントされない。
国によっては永住権はポイント制になっている。ポイントを満たすことができれば、滞在期間に関係なく永住権をもらうことができる。それと比べると永住権を取得するまでの期間やハードルは高い。
永住権を取得するまではフルタイムで働く必要がある
このビザは、一定の給与水準を満たす必要があり、フルタイム職が原則になっている。そのため、永住権を取得するまでの5年間は基本的にフルタイムで働く必要がある。
子育てや体調などワークライフバランスを考え、パートタイムに切り替えたくても、ルール的に難しい。まずは給与要件を満たす時間数働き、さらに雇用主の許可を得ることが必要になる。私の周囲ではフルタイムで働き続けている人しかいないため、具体的な事例は挙げられないが、柔軟な働き方の足かせになると感じている。
永住権までの滞在期間は、配偶者ビザと他のビザを合算できない
このビザから配偶者ビザに切り替えると、永住権取得までのカウントがリセットされ、再び5年間を数え直すことになる。
私はこのビザだと身動きが取りづらいため、パートナーと配偶者ビザへの切り替えを検討していた。でも、滞在期間がリセットされることを知って切り替えはやめた。
また最初から5年をやり直したくなかったし、配偶者ビザの申請・更新費用は数千ポンドとかなり高い。それなら早く永住権をもらったほうが良いと思って、現在のビザを継続することにした。
看護師以外の仕事ができない
ビザによって職業が限定されているため看護師以外の仕事ができない。看護師として働くためにビザが発行されているから、当たり前のルールではある。ただ、自由で柔軟な働き方(パートタイム・副業)ができないのは不便さを感じる。
さいごに
医療・介護従事者ビザのデメリットについて書いたけど、最初の2年くらいはデメリットを考えたことも感じたこともなかった。むしろこのビザはとても優遇されているし、ラッキーだと思ったし、今もそれは変わらない。
でも、月日が経ち、色々な選択肢を考えるようになったときにデメリットを大きく感じるようになった。デメリットがあっても問題なく生活できているけど、不便さや心理的負担が一番大きいかもしれない。
外国人として暮らすには、さまざまなハンデがある。そのハンデのほぼすべてを自力で対応する力を持っておくこと、そして頼れる人(特に友達!)を持っておくことが大切だと思う。