国営医療のウィンタープレッシャー
ウィンタープレッシャーとは
イギリスで看護師として働いている中で、私が最も苦手としているのが冬。感染症の流行に加え、クリスマス期間の休診により患者が集中し、一年で最も医療需要が高まる時期になっている。
この状況を「ウィンタープレッシャー(winter pressure)」と呼び、国営医療サービス(NHS)は毎年、冬になるとサービスもスタッフも限界に近づいていると感じている。
(参考:2025年1月、BBCによるウィンタープレッシャーに関する報道: Winter pressure bad as height of pandemic, NHS says)
病欠とかけ込み需要
冬はスタッフの病欠も増える時期で、人員を十分に補えない場合は、一人ひとりの業務負担が増す。また、人手不足の病棟へ応援に回されることもある。
私がイギリスで看護師として働き始めた2021年秋は、新型コロナの終息がようやく見え始めた頃であり、特に人手不足が深刻だった。そのため、過度な負担がかかるシフトが続き、海外移住と初めての海外就労という状況も重なって、とても辛かった経験になっている。
特に12月は、
- クリスマス前に退院できるよう調整が入る
- クリスマス期間に実施できない検査・治療を前倒しで行う
といった理由で、検査や治療が混み合って忙しさが増す。年によって忙しさに差はあるものの、基本的には普段より慌ただしい。この忙しさを避けるため、クリスマス前に一週間の有給を取得するくらい冬の勤務が好きではない。
この前、救急外来で100人の患者が待機しているため、退院可能な患者は速やかに退院させ、救急外来の混雑を緩和するようにと全職員にメッセージが届いた。病棟は患者受入れ人数に上限があるけど、救急外来は来院した患者すべてを受け入れざるを得ないため、現場の負担はかなり大きいと思う。
救急外来のベッドが満床になると、患者は廊下に案内されることになる。これは「廊下治療」と呼ばれ、イギリスでは深刻な社会問題となっている。
参考:英病院のケア基準「崩壊」、患者は廊下で死亡 看護師労組報告
イギリス流クリスマスの楽しみ方
毎年ドタバタな冬だけど、クリスマスを心から楽しむのがイギリスのスピリット。11月末からクリスマスデコレーションを飾り始め、職場が可愛くなる。
クリスマス期間中は、アクセサリーや服装の規定が緩くなり、スタッフは思い思いにクリスマスを楽しんでいる。
クリスマス会やシークレットサンタと呼ばれるクリスマスプレゼント交換のイベントもあり、参加したい人が参加する。私の職場では、今年はパブでクリスマス会とシークレットサンタをやる予定で楽しみにしている。
病棟にはアドベントカレンダーが登場し、なかには医療と看護のクイズが入っている。申し送りのときにクイズをして、正解した人がお菓子をもらえる。みんなが楽しく参加できて、そしてスタッフに周知して欲しいことを入れ込んでいて、マネージャーの案が素晴らしい👏
アドベントカレンダークリスマス期間
クリスマス期間中に入ると、これまでの忙しさが嘘だったかのようにパタリとやみ、穏やかなモードになる。入院治療が必要な患者だけが残り、積極的な治療は行わないので全体的に落ち着いている。クリスマス期間中は、一年のうちで一番平和で好きな期間でもある。ただ、以前働いていた病棟は専門性に特化していたのでこれは稀な経験だと思う。
クリスマス当日
クリスマス当日は公共交通機関が全て運休となるため、病院がタクシーを手配したり、後日タクシー代を請求できる制度が設けられている。手配したタクシーが時間通りに来なかったり、イギリスあるあるを感じながら出勤する。病院からスタッフへ食事が提供されるなど働くスタッフへの労いもある。
クリスマス当日は、都会の喧騒代表のロンドンも嘘だったかのように静まる。
おわりに
日本で働いていたときも冬場は忙しかった。医療が慢性的に逼迫しているイギリスでは、冬場のプレッシャーはレベルが違って、人もサービスも限界に近付く。インフルエンザのシーズンが終わるまでの辛抱なので、この時期は自分をよく労わるようにしている。
イギリスに来てからほぼ毎年のように風邪を引いているから、今年は風邪を引かないようにしたい。みなさんも体調にお気をつけて年末年始をお過ごしください🎄

