その国にあった看護がある
前回のブログで日本の看護師の素晴らしさについてシェアした。

イギリスで看護師として働いていると、どうしても日本との違いに目が向き、比べがちになる。両国には大きな違いがあるため比較するのは自然なことだが、比べる際には注意すべき点がある。
看護は、その国の法律・制度・文化に合わせて発展している
この前提なしで議論すると、単純な比較と優劣をつけがちになるため、この記事ではその国にあった看護について語っていく。
看護の二つの側面
国による看護の違いを考えるとき、看護には二つの側面があると思っている。
医療面
ひとつ目は、医療面。科学的な根拠に基づいて看護は提供されているため、先進国であれば大差はない。しかし、この科学的な根拠に基づいた看護をどれだけ忠実に実践できるかは、国の財政状況や看護師の教育・トレーニングの質によって影響を受けるため、結果的に国ごとの差が出てくる。
非医療面
非医療的な面でいえば、人と人との関わりが中心となる看護では、文化の影響が強く表れる。
日本は「おもてなし文化」「察する文化」が根付いていて、患者に対して細やかな配慮や礼儀正しさが求められる傾向がある。
イギリスでは、患者が自己決定権を強く持ち、自分の希望をはっきり伝えることが一般的だ。患者の考えていることを察して動くよりも、患者の希望を最大限尊重するように看護師は行動する。
また、日本とイギリスでは働き方がまったく異なる。日本では勤勉さや責任感を重視する風土があり、看護師の自己犠牲的な働き方が美徳とされることもある。
イギリスは、ワークライフバランスを重視しているため、日本のように無理をしてまで働くことは少ないが、プロフェッショルとしての責任感は強い。ただ、それを実践するときには、無理をしない・権利を主張することが前提になっている。
こういった文化の違いがあるからこそ、イギリスにはイギリスにあった看護、日本には日本にあった看護が発展している。
「働くなら海外、患者になるなら日本」
海外で働く看護師が「働くなら海外、患者になるなら日本」と口を揃えて言う。患者として日本の医療を選びたい理由には、日本の恵まれた医療制度や看護師の質の高さに加え、文化的な違いが大きく関係していると思う。つまり、多くの日本人にとって、日本の文化に根ざした看護が最も馴染みやすい。
おわりに
どの国にも、それぞれの文化や制度に適した看護が発展しているが、日本の看護師の質は世界的に見ても高く、素晴らしいと思う。
看護師として日本で約8年、イギリスで約4年働いて感じるのは、「隣の芝生は青い」、そして「どの国の看護師も頑張っている」ということ。私は日本とイギリスのそれぞれの素晴らしさと課題を実際に経験してきたからこそ、それを踏まえながら、日々看護師としてできることを実践している。