インチャージについて
イギリス国営病院(NHS)の病棟で働くインチャージ(責任者)としての一日の流れをシェアする。インチャージは、日本の病棟でいう「リーダー」のような役割で、経験の積んだバンド5または、シニアスタッフナースと呼ばれるバンド6が担当する。
- ロンドンの国営病院(2病院)
- 一般病棟(3か所)
- 日帰りセンター(心カテーテル検査・治療)
病棟で患者を受け持つ看護師の一日のスケジュールはこちら。
インチャージの一日のスケジュール(病棟)
- 7:30 勤務開始、申し送り
全体の申し送りで要観察が必要な患者、インシデントや病棟の伝達事項をスタッフ全員で共有する。
- 8:00 掃除、要観察が必要な患者の確認、安全管理・環境確認
申し送り後は、デスク回りの清掃。ヘルスケアアシスタント(HCA)や事務もやってくれるけど、受付周辺の掃除はインチャージの業務のひとつになっている。
掃除前に要観察が必要な患者がいれば、真っ先にその患者を観察する。申し送りの情報と現在の患者の状態に違いがないかチェックする。患者の状態が良くなければ、必要に応じて医師に報告したり、スタッフのサポートをしたりする。
安全管理・環境確認は、病棟によって違いがある。心電図モニター、救急カート、消火器、点滴ポンプ設定、食事ボードのなどの確認を行う。
循環器病棟なので心電図モニターの確認はとても重要。患者のベースとなるリズムと深夜帯から朝方までの心電図記録を一人ひとり確認する。
- 8:30 挨拶、シーツ交換
患者が35人以上いると、ひとり一人挨拶するのは時間的に厳しい。でも、忙しくない限りは、名前と役割(インチャージ)を患者に伝えて、朝の挨拶をするようにしている。この挨拶は、患者ー看護師関係を築く小さなきっかけになるし、顔と名前を認識してもらう機会になる。
シーツ交換は毎日行う。主にHCAと受け持ち看護師が行うけど、時間があれば手伝う。清潔ケアを手伝うときもある。
- 9:00~12:00 業務調整、回診、他職種との連携
業務調整
申し送り後から昼までは一番忙しい時間帯。朝一番の手術や検査で一度に多くのスタッフが病棟から離れる。集中したい朝の配薬中に色んな業務が入り込むので、業務を上手く調整する。
業務調整に必要なのが状況把握力、優先順位の判断力、スタッフ一人ひとりのスキルの把握力、決断力、問題解決能力、伝える力。
コストカットの影響で事務が不在の日も多い。電話対応をしながら、多くの業務をこなすのは本当に大変。
回診
現職場では、インチャージも回診に参加する。回診に参加することで、患者の治療プランを詳しく把握することができるため、とても役立っている。回診中は、患者の代弁者として関わったり、医師と患者の橋渡し役としてはたらく貴重な機会にもなっている。
忙しいと参加できない日もある。そして、忙しすぎる職場だと回診に参加できない。
他職種との連携
午前中の間に理学療法士、作業療法士、クリニカルナーススペシャリスト(CNS)、退院調整チーム、栄養士、緩和ケアチームなどの他職種と連携をはかる。イギリスは専門性に特化しているので、各専門チームとのコミュニケーションが欠かせない。
患者にどのようなサポートが必要がアセスメントし、各チームに依頼・伝達するのはインチャージの主な役割になっている。
- 13:00~16:00 カンファレンス、業務調整、指示の確認、退院
カンファレンス(MDTミーティング)
イギリスでは、カンファレンスはMDTミーティング(Multi-Disciplinary Team:多職種チーム)と呼ばれ、さまざまな医療スタッフが集まって行われる。専門分野に特化したイギリスならではの会議で、患者の治療や生活支援についてを話し合うときは、関わるすべてのスタッフが参加する。
これまでの経験では、病棟看護師がMDTカンファレンスに参加する機会はあまりなく、CNSか師長が出席することがほとんどだった。現在の職場では、病棟看護師も参加することができ、私も時々参加している。
業務調整
引き続き、業務調整。休憩の調整やサポートが必要なスタッフを手伝う。
午後は、検査や治療の帰室が重なる時間帯。そして救急病棟からの転入、転院など患者とスタッフも出入りが激しい。検査や治療の帰室、休憩などが重なると、病棟に残るスタッフが減るため、調整の難易度が一気に上がる。平常心を保てるときもあれば、もう無理!と思うときもある。
指示の確認
治療プランの指示がきちんと入っているか確認する。たとえば薬なら、処方内容は正しいか、検査や治療のオーダーは入っているかなどを確認する。
退院
イギリスでは、退院の決定が当日に行われることが多い。日本では退院は決定の翌日以降が一般的で、準備時間に余裕があったことを懐かしく思う。退院サマリーや退院処方の準備には3~4時間かかるため、すぐに帰りたい患者が多いイギリスでは、待ち時間に激怒することもある。こういったクレームに対応するのはインチャージの仕事。
退院があるとベッドに空きができる。ベッドコントロールはベッドマネージャーが担当しているため、新しい入院患者の受け入れについて連絡し、調整を行う。
ベッドマネジャーについては下記の記事で紹介してます!
- 17:00~19:30 業務調整、申し送りシートの修正
引き続き、業務調整。申し送りシートは、ワードファイルを使用している。すべての患者の情報を更新するのは、地味に時間がかかる。電話対応やスタッフのサポートをしながら行うため、中断されることが多い業務。勤務終了間近になったときにまだ終わってないと焦る。
ちなみに休憩時間とタイミングは、職場によって異なる。前の職場はティータイム休憩15分×2、食事休憩30分×2だったけど、今の職場は食事休憩30分×2のみ。12時間働くのに休憩が短いと思う。忙しいと休憩が30分しか取れない勤務も普通にある。インチャージは色んな責任をもつので、なかなか休憩にいけないことも多い。インチャージのをするときは、30分休憩しか取れないことが半分くらい。
- 20:00 – 20:30 勤務終了、申し送り
夜勤者に申し送りをして終了。終わらなかった業務は、夜勤のインチャージに依頼する。
その勤務帯を背負うということ
インチャージは、その勤務帯の責任者となるため、精神的ストレスが高い役割となっている。そのため、インチャージをやりたくないと感じるスタッフもいる。(職場によっては、本人の意思に関わらず強制的に担当させられているケースもあるそうです。)
また、インチャージをすると、師長やメイトロンとの関わりが増えて、職場の人間関係や組織の在り方がより鮮明に見えるようになる。
上司(師長・メイトロン)のサポートの有無によって、働きやすさは大きく左右される。十分なサポートが得られなかったり、現場の声を聞いてもらえない状況が続くと、精神的負担はとても大きい。そのような職場では、インチャージを担うバンド6や経験豊富なバンド5が次々と離職していく傾向がある。離職率が高いとスタッフへの負担が増えるため、職場環境の良さがとても重要だと感じている。
インチャージをして一番良かったのは、ヒューマンスキル(対人関係スキル)を磨けたこと。海外特有の行き当たりばったりな状況に揉まれたおかげで、イギリスでの生活スキルも自然と身についたと思う。
インチャージは大変だけど、やりがいがあって楽しい。患者を受け持たないため、直接的な患者ケアは減るけど、一つひとつの言動と行動が生み出すインパクトには奥行きと深さがある。患者とチーム全体にポジティブな影響をもたらすことができる役割でとても気に入っている。(逆もあるので気をつけます。)

