病棟勤務(4年目~)

イギリス看護師の入職オリエンテーションと研修

2021年からイギリスで看護師として働き始め、早いもので4年目を迎えた。イギリスで初めて勤めた病院は人と環境に恵まれていたので、ロンドンを離れるまではこの病院で働き続けると思っていた。でも、月日とともに人と環境は変化するもので、次のステップアップとして自分の可能性を広げてみたくなり、転職をした。2025年から心機一転、ロンドン市内の大学病院で働いている。

入職オリエンテーション

集合研修

イギリスのオリエンテーションは、日本と同じくきちんと系統だてて準備されている。イギリスには日本のように年度始めの4月に一括採用をする慣習はなく、通年を通してスタッフの採用は行われている。そのためオリエンテーションは新しいスタッフが入る度に実施される。

私は初日、教育センターで多職種と一緒に集合研修を受けた。大きな病院では病院の建物とは別に教育センターを設置しているところもある。

転職先は大きな病院だけあって、新しいスタッフの迎え入れに慣れているようだった。時間通りに研修は進み、研修後はユニフォームの受け取りとマネージャーに挨拶をして終了。あまりにもスムーズ過ぎて、イギリスらしくないと感じるほどだった(イギリスに限らず海外では、予定されたことが予定通りいかないのが通常運転)。

オリエンテーションとは別に看護師向けの集合研修が2日間かけてあった。

看護師向け集合研修の内容

  • 院内感染
  • 褥瘡予防とケア
  • 転倒予防と対策
  • 輸血
  • 栄養・病院食について
  • フリーダムスピークアップ
  • スタッフの健康サポート
  • EDIチーム

イギリスならではの研修だと思うのが、フリーダムスピークアップスタッフの健康サポート・EDIチームだ。

フリーダムスピークアップは、職場内でのいじめ・ハラスメント・患者の安全に関わる問題などを相談できる窓口だ。職場内で解決が難しいときに駆けこむことができる窓口で、スタッフと患者の安全を守るためにある。この制度はすべての国営病院にある。

スタッフの健康サポートは、病院によって異なるが、現職場ではスタッフ向けの食事指導、ヨガや散歩などのエクササイズプログラム、心理士とのセラピーなどのサービスが充実している。

EDIはEquality(平等)、Diversity(多様性)、Inclusion(包括)の頭文字をとったもので、現代のイギリスでは欠かせないテーマになっている。特にNHSではEDIの広がりが盛んで、人種マイノリティのグループ、LGBTQIグループ、Neurodiversity(脳の多様性、日本では発達障害と表現されている)グループなどがあり、それぞれ活動している。

配属先でのオリエンテーション

集合研修が終われば、各部署でオリエンテーションが行われる。イギリスにはエデュケーターと呼ばれる役職があり、教育を専門としている。新しいスタッフのオリエンテーションや指導、研修の企画などスタッフ教育を担当する。病院にもよるが、人手不足などよっぽどのことがない限りは現場の一スタッフとして働くことは滅多にない。私の友達きういは、このエデュケーターとして働いている。

私の部署には2人のエデュケーターがいて、病棟勤務初日には病棟を案内してくれたり、色々なITのセットアップも手伝ってくれた。

コンピテンシーブック

イギリスでは、与薬・採血・点滴投与・点滴針留置・輸血などの看護技術を一人で実施するためには技術チェックを受ける必要がある。同僚や先輩に実施しているところを複数回チェックしてもらい、合格をもらって初めて一人で実施することができる。技術によって対面研修・オンライン研修が必須の場合もあり、患者の安全に関わるものはしっかりとルールが定められている。

この技術チェックの冊子を「コンピテンシーブック」と呼んでいる(コンピテンシーは能力、技能という意味をもつ)。この冊子を一人ひとり与えられ、技術チェックを済ましていく。

コンピテンシーブック

私は最初に勤めた病院でほとんどの技術チェックをパスしていたので、その記録を提出した。技術確認のために再度技術チェックを受け、同僚からサインをもらう必要があった。忙しい勤務中にチェックを受けて、サインをもらうのは結構大変で時間がかかる。

その人に合わせたオリエンテーションと研修

イギリスは新卒採用・中途採用・外国人採用と看護師の背景が多様なため、その人に合わせたオリエンテーションと研修が用意されている。私が最初に勤めた病院では、外国人看護師向けにプリセプターシップがあった。

人によって経験と知識、覚えるスピードに差があるので、その人に合わせた指導が行われる。実際の現場での指導は、かっちりと型にはまったルールはなく、そのときに合わせて柔軟に対応している。この時期までにこれができていたら良いね、という期待はあるけど、その期待に縛られることなく指導している。

日本の病院のように4月に新卒一括採用、全員で一緒にゼロからのスタートをしないので、比較される環境にあまりない。人と比較して評価・非難されることもないので、そこは気がラクだ。

おわりに

転職してから、初めてイギリスで働いたときの気持ちを思い出す。新しい場所でのスタートは、楽しみと不安の気持ちが入り混じる。イギリスで働き始めたときは不安ほうが大きかったこと思うと、だいぶ自分が成長したことを感じる。

新しい名札

新しい病院、新しい役職を通しての学びはまたブログでシェアしていきます!💙

ABOUT ME
Mari
Mari
日英看護師。2012年看護師免許取得。総合病院勤務を経てカナダへ医療英語留学を経験。2021年に渡英しイギリス看護師免許を取得。ロンドンの大学病院(NHS)の循環器病棟にシニアスタッフナースとして勤務。

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